2023/12/13
【レポート】三垢離体験モニターツアー
学べ!熊野古道 知ってる?三垢離~身も心も清めて蘇りの地へ~
熊野古道は「紀伊山地の霊場と参詣道」として2004年に世界文化遺産に登録されました。
2024年に20周年を迎えることを記念し、上富田町観光協会、上富田町、田辺市、JR西日本は三垢離を通じた新たなルートを巡る、特別体験モニターツアーを実施しました。
参加させていただいた、第1弾 2023年12月9日(土)~12月10日(日)の様子をご紹介します。
潮垢離からはじまる熊野詣
(参考:「熊野古道」ってなに?)
当日はくろしお1号に乗ってJR紀伊田辺に集合。
まずは熊野詣の事前儀式である「潮垢離」を行うため、駅から約2km先にある扇ヶ浜へ向かいました。
かつて、和歌山県以北から海辺の紀伊路をたどって田辺までやってきた熊野詣の参拝者は、最後の海となる田辺市江川の出立浜(でだちはま)の潮水で心身を清める潮垢離(しおごり)を行いました。
現在、出立浜は漁港となっており昔の姿が残っていませんが、扇ヶ浜には簡易的に潮垢離を体験できる潮垢離場(しおごりば)と説明看板があります(木の看板はイベント用で常設ではありません)。
海水をそのまま汲み上げているため、手洗い後に口をゆすぐとしょっぱいです。
今回は実際に海で手や足を清め、2日間の旅路は潮垢離からスタートしました。
上富田町の王子跡と水垢離場を自転車で巡る
今回は、熊野古道をバス・電動自転車・徒歩を併用して巡ります。
潮垢離の後、バスで隣町の上富田町JR朝来駅付近にある「KMICH」へ。
電動アシスト付きスポーツ自転車をレンタルし、上富田町内の王子跡を辿りました。
八上王子跡、稲葉根王子跡、一瀬王子跡それぞれに、上皇や歌人が訪れた記録が残されています。
稲葉根王子は潮垢離を午前中に済ませて出発した一行が昼食休憩として立ち寄り、向かいにある岩田川(現富田川)は水垢離を行った場所でもあります。
現在はこの場所に水垢離場が整地され、足湯のように、川から引いた冷水に足を浸けることができるようになっています。
浸している間は凍えそうになりますが、足を上げてしばらくするとぽかぽかして全身が温まりました。
熊野古道には川を渡って進む箇所があり、この岩田川渡りは一の瀬を皮切りに滝尻王子までの間で19回行われたと言われています。
山中に入る前にもこのような過酷な道を乗り越えていたのですね。
一瀬王子跡を出て、昼食会場の「農家レストランsorisso」に到着。
全14kmのサイクリングでしたが電動アシストのおかげで疲れはゼロ!
それでもお腹は空いたので、地元の食材をふんだんに使ったこだわりのお料理をお代わりするほどいただきました。
ちなみに、デザートに使用されている「ヤマモモ」は上富田町の町木の実で、上品な甘酸っぱさが特徴です。
食後は紀州材にこだわった工房「西嶋木工」で杖と曲げわっぱ作りの体験。
素材となる布袋竹(ほていちく)をバーナーで炙り、個性を出します。次に、旅を守る四神(青龍・白虎・朱雀・玄武)を示す4色の紐を巻き付けて、翌日からの相棒が完成!
曲げわっぱは煮込んだ桧を手動のローラーで徐々に曲げていき、カーブがついてきたら型にはめます。簡単そうに見えますが、思うところに木をあてがうのが案外難しい…
完成させるにはまだまだ作業が必要で、今日のうちには終わりません。
代わりに出来上がった曲げわっぱに加えて、紀州桧のまな板やぐい飲みなどたくさんのお土産をいただきました。そして次はバスで湯垢離場へ。
世界遺産として唯一入浴できる湯の峰温泉
田辺市本宮町にある湯の峰温泉は約1800年前からその存在が認められており、現在も情緒ある街並みがそのまま残っています。
熊野への参拝者はいよいよ熊野本宮大社を目と鼻の先の距離にして、詣でる前に湯の峰で湯垢離(ゆごり)によって身を清め、長きにわたる旅の疲れを癒していきました。
湯の峰温泉つぼ湯は、世界遺産登録された温泉として唯一現在も入浴することができます。
先着順で番号札をもらって30分交代制での入浴になっており、込み合う時期には2時間ほど待たなければいけないこともあるそうです。
私たちが宿泊したお宿は、つぼ湯がある温泉街から少し離れたところにある「湯の峯荘」。
荷物を置いて、少し休んで夕食会場へ。
食前酒はしっかりと冷やされた梅酒。
田辺市では「梅酒で乾杯条例」を制定して今年で10周年を迎えます。
一日帯同された上富田町ボランティアガイドさんの発声で、梅酒で乾杯を行いました。
お肉から海の魚、川の魚まで盛りだくさん。
食事中も熊野古道や湯の峯、小栗判官にまつわる話を聞かせていただきながら、お腹いっぱいいただきました。
お宿には事前予約不要の貸切風呂があったので、朝は”くすり湯”と呼ばれる源泉かけ流し100%のお風呂に入りました。
湯の華が大量で少しつかるだけで肌がつるつる。半露天風呂で外気が気持ちよく湯温は熱過ぎず、時間を忘れて浸かってしまいます。
夜も朝もしっかり湯垢離をして、いざ熊野古道へ!
蘇りの地 熊野
今回歩いたのは、伏拝王子から熊野本宮大社までの約3.3km。
水分が豊富な紀伊山地の森は、霧に覆われていて幻想的な雰囲気でした。
冬は鳥の鳴き声も少なく、自分たちの声が響きます。
道端に生えるシダや苔、竜胆(リンドウ)の蕾などに目をやりながらどんどんと進み、見晴峠に登ると一気に視界が開けます。
視界の先に、うっすらと大斎原の大鳥居が見えました。
いつの時代もここからの眺めに励まされ、あと少し頑張ろうと気持ちを新たにしていたのだろうと思います。
そこからはあっという間に熊野本宮大社に到着。
早々に正殿前でのお祓いを受け、九鬼宮司からの直接大社についてお話をいただきました。
元々は熊野川の中州にあった熊野本宮大社ですが、1889年の水害で流されてしまいました。
なんとか形を残した社殿を解体し、急いで現在の場所まで運び、当時の技術を集結させて復元しました。
かかった期間はなんと、たったの1年8か月だそう。
被害にあって自分達の生活もままならない中、それだけ大切なものとして扱われていた熊野本宮大社。
熊野には、険しい道を歩き詣でることで自身の過去を洗い、安らかな現世と来世への生まれ変わりを祈るという意味での“蘇り”だけでなく、人々が力を合わせて短期間で遷座を成し遂げたことで大社そのものも“蘇り”をしたという、二重の意味があるということが分かりました。
有難いお話の後には、来年度に世界遺産登録20周年迎えることを記念したステッカーや特別御朱印、御神酒代わりの梅ジュースなどをいただきました。
その後は熊野川を眺めながら曲げわっぱに詰めたお弁当をいただき、大斎原や大社で各々でお参り。
最後は白浜町とれとれ市場でお土産を購入してツアーは終わりを迎えました。
潮垢離から始まり、水垢離、湯垢離と清めの儀式を繰り返して熊野を詣で、1000年前に参詣していた人々に思いを馳せます。
今回歩いた道は少しだけでしたが、熊野古道や三垢離についてたくさん学び、もう一度きちんと、もっと長い距離を歩きたいという気持ちになりました。
今後は「潮垢離からはじまる熊野詣」がポピュラーになり、田辺市を起点として上富田町の水垢離や白浜町の安居の渡し(川渡り)など、歩くだけではない様々な体験を通して、より地域の魅力を感じながら熊野古道を楽しんでもらえるようになると良いなと思います。
熊野古道世界遺産登録20周年に向けた「特別体験モニターツアー」について
JR西日本
学べ!熊野古道 知ってる?三垢離 ~身も心も清めて蘇りの地へ~
上富田町観光協会、上富田町、田辺市、西日本旅客鉄道株式会社(以下、JR 西日本)は、地域各種団体との協働により、2024 年の熊野古道世界遺産登録 20 周年を心待ちにしている熊野古道ファンの皆さまを対象に、未知なるルートを巡る「特別体験モニターツアー」を開催します。
熊野の魅力を惜しみなく発信していただける参加者のご応募をお待ちしています。
1.実施目的
熊野古道世界遺産登録 20 周年や上富田町による水垢離場の整備を契機に、熊野古道の新たな主要ルートとして「三垢離」※1 や「三王子」※2 といった魅力的な観光素材を活用し、広く情報発信することでインバウンド誘客につなげたいと考え、モニターツアーを実施することとしました。なお本企画は、観光庁の「インバウンドの地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツ造成支援事業」の一環として実施します。
※1:垢離とは祈願する際、水を浴びて体のけがれを除き清めること。今回、海水による「潮垢離」、川の水による「水垢離」、温泉による「湯垢離」を「三垢離」として体験いただけます
※2:王子とは熊野詣の先達を務めた修験者により、12~13 世紀にかけて組織された一郡の神社のこと。今回、電動アシスト付スポーツ自転車で「八上王子」「一瀬王子」「稲葉根王子」の「三王子」を巡ります。
発表元による原稿まま掲載。
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